Chiaki Arai Urban & Architecture Design
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第21 回JIA25 年賞 The 21st JIA25 Year of Appreciation

講評
1995年に竣工し、翌年の日本建築学会賞(作品)を受賞した黒部市国際文化センター/コラーレは、ハードとソフトが共によく保たれ、四半世紀を経て、新たな意味を帯びている。
広い水盤にはオレンジ色をした逆四角錐の展示室が姿を写し、大ホールの円筒形は今も鮮やかな白色だ。二つを架け渡して続くガラス面も、左手でカーブしたピンク色の壁も、当時このように色彩や素材や形態を多様に用いることが流行していた事実が明確に分かるほどに、美しく維持されている。
いわゆる「ポストモダニズム」爛熟期の一作とみなされるのかもしれない。現在の建築とは違った賑やかさが、確かにある。内部の市民スペースには石張りの暖炉があり、アルミのパイプを曲げて絞り丸太の床柱に見立てた茶室が設計され、吹き抜けのレストランにはバーカウンターが備えられている。かつて公共建築が公共建築らしくないものを目指し、設計者がデザインの楽しさを健やかに表現できた時代が、保持されている。
それらは今、さらに溶け合い、単なる劇場や公民館ではなくて真の文化センターを実現しようとした、当初の目的に適合している。この施設は利用率が高く、人々がさまざまな場所に滞在している。一つの理由は、設計の性格だろう。他と似ていない、それぞれのキャラクターを明瞭にして作り込まれた空間は、行きたくなり、使いこなしたくなるものだ。それらがつながりあっていることが、滞在してよい、抜けて構わないといった空気を生んでいる。
もう一つ、市民参画による企画と運営の伝統も重要だ。利用の中心は主催公演事業や自主公演事業であり、市民活動グループとして組織された「コラーレ倶楽部」のアクティブな活動は開館以来、情報誌を毎月、編集・発行していることからもうかがえる。
これら二つの要因として、設計者である新居千秋がコンペ当選後に既存のプログラムに疑問を抱き、市の賛同を得て、市民の文化活動の実態を踏まえた施設運営プログラムやマネジメント計画から関わった経緯がある。市民ワークショップを重視した点でも先駆的で、完成した建築を設計者は「コラージュシティ」と称した。27年間という時間が実際にそれを、こなれた都市に変えている。
黒部市国際文化センター/コラーレは一見、対立しそうな存在をつないでいる。実際の形や空間もさることながら、建築家と市民、1995年と2022年といった関係についてもそうである。「JIA25年賞」という枠組みが発見を与えている。