Chiaki Arai Urban & Architecture Design

第18回JIA25 年賞 The 18st JIA25 Year of Appreciation

講評
大英博物館の図書館やアスプルンドが設計したストックホルム市立図書館など、図書館建築の系譜を遡り、円形の図書館を実現させた。ドーム天井が架かった大空間には同心円状に書棚が配され、2階の壁面もぐるりと書棚が取り囲む。本に包みこまれたような閲覧室だ。その外側は展示ギャラリーが一周し、そこからさらに、児童開架室、新聞・雑誌コーナー、視聴覚室、会議室など、大きさの異なる様々な部屋が放射状に延びる。外から見ると、各諸室はそれぞれに家型をかたどっている。そしてその外側には、楕円形の回廊がジョギングコースとして巡っている。
強い形式性と象徴性を備えたデザインは、1970〜80年代の建築界を席巻したポストモダニズムの志向をうかがわせる。その後、流行としてのポストモダニズムは廃れたが、この建物のように内部空間までしっかりと設計がつくり込まれたていれば、良さは時代を超えて共有されるものであり、その価値はすり減ることがない。そんな感想をいだかせる建築である。
技術の面からも興味深い。ドーム屋根の施工では鉄筋格子シェルの構法を採用し、仮設なしでコンクリートシェルの架構を実現したのだ。ドーム形状を決めた格子が最終的な仕上げとしても現れており、構法と空間表現の統合を果たした見事な構造デザインだ。
竣工して26年が経ったが、建物はよく保全されており、周りの木々が育った以外はほとんど変わっていない。地震時に閲覧室の照明ポールが破損し、その際に高さを変わったが、その改修設計にも当初の設計者がかかわっている。
利用者は現在も多い。訪れた際には子供からお年寄りまで幅広い年齢層の地域住民が、1階のベンチや2階回廊の読書コーナーなど、それぞれにお気に入りの場所を見つけて本を開いていた。
また「図書館戦争」などの映画やミュージック・ビデオで、繰り返しロケ地としても使用されてきた。魅力的な図書館の空間として全国の人々に知られると同時に、水戸市民の誇りともなっている。